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共通テスト国語小説対策

 珍しくド直球な題名
 

 小説読解に際し、小中学生向けに為されがちなアドバイスとして、「登場人物が【背景・状況・事件】の中にいることを前提に、その【行為・出来事】と【心情】とが相互に因果関係となりつつ移ろっていく様子を捉えよう」というものがあります。最初の行為または心情はその話の背景が作り出しており、以降、行為が新たな心情を、その心情がまた新たな行為を生じていくわけです。
(*演習時は因果関係を逆転させて解釈しないよう注意)

 

 この対応はもちろん大学受験レベルでも妥当しますが、「きちんと守らずにいると大量失点の危険性を高める」程度のもので、きちんと守ったからと言って点数が伸びるものではないかな。
 

代わりに高校生向けの必勝法としてよく耳にするのが、「主観を入れたり感情移入をしたりせず、心を無にして書いてあるものだけを根拠に解け」というアドバイスです。
 多くの人が一度は耳にしたことがあると思います。しかし!僕はこれに半分反対です。なぜなら、この手法は大人になった人が後で気づいたものであり、未成年がきちんとこなせる処理であるとは言い難い上に、積極的に読む姿勢を奪ってしまうものでもあるからです。
(英英辞典での学習も似たところがあると思います。英語強者になら理解できますが、英語が苦手な人に勧める学習法ではない)

 

では、代わりにどのようにすれば良いかというと、僕は寧ろ、ミスリードも含めてちょっとした布石にもいちいち反応して予測を立てながら読み進めることを推奨しています。勿論、その予測はただの仮説であり、誤っている可能性も高いので、正誤判断の出来る情報が出てきた時点で修正をおこないます。その「正誤判断の出来る情報」が、上述の「書いてあるもの」です。少しだけ具体的に言えば、時代、場所、行為、出来事、心情を直接表現したものなどであり、これらを選択肢との照合に用います。この照合作業に主観を絡めるのはNGです。例えば、本文に「Aは大自然の壮大さに圧倒され思わず目に涙を浮かべた」とあるのを曲解して「Aは大自然のただなかで故郷に残した家族を思って泣いたのだな」と判断し、そのような選択肢を正解として選んでしまうような行為は駄目だということです。
 王道の手法に「主観的仮説をどんどん立てて、読みながら検証と修正をする」を挟む。ぜひ試してください! 

 

 

 

 ところで世間には、「他人の気持ちが理解できないから小説は苦手だ」という言い訳が散見されますが、実際問題、本当の本当~に登場人物の心情を推察できないと正解不可能な問題は稀で、あってもせいぜい1問です。上述の取り組みを繰り返せば安定してきます。

寧ろ重要なのは、以下の点です。


1.語彙力…なんだかんだで。新課程世代の共通テスト【模試】の小説からは語義を問う問題が削除されたようですが、直接問われようと問われまいと、語彙力は重要。小説を読んでいて意味の分からない・曖昧な言葉が多いと、リズムが狂って没入感を失い、スピードが遅くなるんです。評論は少々詰まる方がむしろ良い場合もあるけれど、小説の本文を凸凹なリズムで読まざるを得ない状態は、恐らく皆さんの想像する以上に損失が大きい。過去問に収録されている語義問題と評論で出題される漢字問題程度で構わないので、20年分は取り組んで知識を増やしてください。漢字は傍線部だけではなくフルサイズで書いた上で、知らない言葉の意味を調べ、且つ、漢字1字ごとの意味の確認もしましょう。現代文と漢文の両方にメリットがあります。読んだ・解いた文章の中に収録されていた語を学習する行為は、単語帳によるインプットよりも記憶に残りやすいです。予想よりもかなり多くの言葉を使えるようになることでしょう。また、学習後はすぐに会話で使ってください。定着しやすくなるので。

 

 

2.比喩…設問に直接・間接に関わってくることが多いです。しかも、比喩は解釈する側に高度な能力(=抽象と具体の双方を行き来できる能力)を要求する表現であるため、たとえ設問との関わりが無くとも、(普段は)立ち止まって考える習慣をつけた方が総合的にはプラスです。もっとシンプルに言えば、比喩を比喩だと気づける人とそうでない人との読解力の差はかなり大きい。気づけるようになるだけでもかなりの前進!

 

3.人物の区別…小説で点数に繋げられない人の多くが、どれが誰の行為かを区別できず、しかもそれを自覚することなく読み進めています。事実上不可能な「他人の心情理解」を頑張るよりも、とりあえず状況を整理整頓する訓練にエネルギーを割いてください。

 

 

4.模試による再現力の低さを知る…数学ほどではないけれども、小説も模試の問題とのギャップは結構大きくて、模試で11点とか19点とかだったのに本試で50点を取ったとか、反対に、模試では40点台ばかり取れていたのに本試で20点台後半まで落としてしまったとかいった事例を何度も見てきました。設問・選択肢の文の作り方が違うんよね。本試験には、たった1つの単語で文の意味や結論を大きく変えたり、文構造、例えば読点の位置で意味を確定させたりするような工夫が施されているのです。あれは多分、原案から何度も推敲してより相応しい語を追及しているのだと思います。テストの作成期間が大違いだから、模試で同じことをするのが困難であるのはある意味当然ですね。なお、本試験で高得点を取れた人に共通しているのは、僕のアドバイスに従ってちゃんと過去問を解いたということです。もしも201020132014201520162021(共通テスト)で40点を下回るケースが目立つようであれば、思考・語彙・創意工夫が不足していると反省し、改善を!

一方、20112012の出来が良ければ自信を持っていいかなと思う。

 さて、以上のアドバイスに加え、現在のテスト形式のややこしさをどうすれば味方に出来るかを研究し対処することで、展望が完全に開かれるわけですが、流石にこれは企業秘密ということで(笑)